『本とも』12月号

投稿者:chica

お知らせするのが、だいぶ遅くなってしまいましたが。。。

徳間書店のPR誌『本とも』にて、chicaが連載する書評エッセイ「My life My book」のお知らせです。

 

今回のテーマは「秋の夜長に、よろめき再び」。

 「以前にも書いたが、もう一度言うと「秋はよろめきの季節」だ。ちょっとだけ、アンニュイで、ハッピーで、ロマンチックな気分に浸りたくなるから不思議である。   個人的なことを書いてしまうと、昨年の「よろめき」シーズンから比べて、だいぶハッピーな状況にあるのだが、やはり「よろめき気分」が止まらない。すでに充分ロマンチックでハッピーなのに、そんな気分に浸りたくなるのは、幸せが日常化されているからに他ならない。よりドラマチックな日常を願うのは……」

Read more?

 

『本とも』12月号より、続きをお愉しみいただけます。機会があれば、お近くの書店にてご入手ください。

 

 

あぁ素晴らしき、文化的アイロニー

投稿者:chica

「皮肉」という言葉がある。この言葉、とかく良くない意味で使われるのが常だ。「あの人は皮肉屋さんね」とか「皮肉も気がつかないほどだ」とか。確かに皮肉ばかり言っている人は魅力に欠ける。まるで「俺様はこんなに頭がいいのだ」と言うかのように目の前でふんぞり返る人も確かにいる。

「悪口」と「皮肉」は完全に違うもので、皮肉にはインテリジェンスが必要である。そこには「通じる人には通じる」共有の笑いがあるのだ。そんな皮肉を多くの人と共有できる笑いに昇華させることができる人ほど、真のインテリゲンチャではないかと思う。

こんな風に、いつになく感じさせたのはいうまでもなく本である。たまたま、山椒のようにピリリと刺激を受ける本が手元に2冊。1冊目は、コメディーライターの須田秦成氏とコラムニストの中丸謙一朗氏による共著できるビジネスマンのための大物講座』だ。

誰だって「あいつは小者だ」と思われるより、「大物だ!」と思われた方が良いと思うだろう。この本は、そんなあなたの気持ちにそっと寄り添う1冊である。人はどのような過程を経て大物に成っていくのだろうか。それをこの本が全編通して教えてくれる。「まずは格好から入れ!」と。。。

具体的なその「格好」の一部を目次から紹介すると

「大物は「ゆっくり」によってつくられる」

「正しい言葉遣いがメタボを防ぐ」

「阿久悠の歌詞は、大物のバイブルだ」

「大物の家のやかんはデカい」

などなど。。。大物を装うアイディアが満載だ。抱腹絶倒と言ってしまえば過言かも知れないが、その昔駄菓子屋さんでハマった「点取り占い」さながら、こみ上げるクスクスに包まれる心地よい時間を過ごすことができるだろう。

 

さて、2冊目の本は雑誌『食楽』で連載されていたなぎら健壱氏の『絶滅食堂で逢いましょう』

「絶滅」と聞くと、なんだか良くない言葉のように思われるかも知れないが、本作を読めば判る。この「絶滅食堂」のネーミングには、実に多くの愛情が詰まっているのである。そもそも「絶滅食堂」とは「いまどきの流行の店でもなければ、カリスマシェフもいない、時代に逆行したマイノリティな店。それゆえ、町の人々に深く長く愛されているのも大きな事実。空気のようにほんわかと親しまれ、なくてはならない存在であること。」と、最初に定義されている。

そのような決まり事に乗っ取ってなぎら氏が選んだ25軒の「絶滅食堂」が紹介される1冊だ。もちろん、店の必要なデータや詳細が書かれているが、なぎら氏自らが撮影した、店に溢れるノスタルジックな空気感と共に味わい深い筆致ですすめられる本文は、読者を店に誘うためのガイドブックというよりはむしろ、なぎら健壱を知るガイドブックなのであろう。

そして、すべて読み終わった時に「さあ、あなたならどんな店を紹介し、どのような1冊を作りますか?」と、なぎら氏が語りかけてくるような素敵な本である。

 

一見、ガイドブックのようでいてその実、自伝のように雄弁な1冊。

一見、手引き書のようでいてその実、風刺の効いたコメディな1冊。

「此処ではない何処か」へ行ってみたくなった時にお薦めの2冊だ。

CBSドキュメントより

投稿者:chica

深夜にTBSで送られる「CBSドキュメント」の番組が好きだ。
毎回、アメリカの視点によって作られた番組をイギリス人のピーター・バラカン氏と日本人の吉川美代子氏が論評コメントをするのもお気に入りのポイントである。この番組で取り上げられた内容は、本国で書籍化されたのち日本に翻訳本が出ることが多く、興味のある番組内容だと、つい本を買ってしまうのだ。

今までに購入したものの中では、グラミン銀行でノーベル平和賞を受賞された『ムハマド・ユヌス自伝』やサヴァン症候群で数字に関して天才的な能力を発揮するダニエル・タメットの『ぼくには数字が風景に見える』など、評伝ものが多いようだ。

そして今回私が購入し、貪るようにして読んだ1冊は、ボブ・ドローギン著の『カーブボール』。ここで云う「カーブボール」とは、所謂野球のカーブボールではなく、その特性を表す「クセダマ」などの意味からとられたコードネームを付けられたある男のことを指している。

9.11のテロを封切りとし、その後アメリカがイラク戦争へと突き進んで行ったことは、記憶に新しいだろう。しかも、国連による査察団やその他の情報で「イラクは大量破壊兵器を保持していない」とされたのにも関わらず、「保持している」と断じてアメリカが戦争に突入した経緯はなんだったのだろうか? と、思っていた人は少なくないだろう。かく言う私も、「どうせ石油が欲しいんでしょう? アメリカの国益の為じゃない?」なんて思っていた。

実際にはそんなに単純なことではなく、もっと複雑な思惑が絡み合ってこの戦争が始まったのだ。しかし、その責任の大きな一端を担っていたのが、この「カーブボール」と呼ばれた1人のペテン師だった。

「カーブボール」と呼ばれた男、イラク人のアルワンは、しきりにドイツへと政治亡命をしたがっていた。そして、嘘をついてまで世界を騙すことにしたのだ。その嘘に踊らされた人たち、その嘘を利用した人たち、国家。。。 それらがどのようにブレンドされて今日のイラクの現状があるのかを、この500ページ余りの本が飽きさせることなく教えてくれるだろう。「事実は小説より奇なり」というが、そんな言葉も納得の1冊である。